はじめての綿栽培 はじまりは5粒の種蒔き



 
草ぼうぼうの耕作放棄地を手作業で開墾しながら、
山の小さな畑で綿の栽培をしている。
 
「蒔いてみる?」
 
はじまりは、種の交換会で譲っていただいた5粒の綿の種。
棉の木に花が咲いて、実をつける。
それが綿になるなんて、知らなかった。
 
栽培方法も調べず、譲っていただいた和綿の種を蒔いた。
なんとなく畑の土を苗ポットに入れて、種を蒔いて水やりをしただけ。
 
しかし…
いつまでたっても、芽が出ない。
 
土の中をのぞいてみたい。
種を掘り出してみたい。
 
種まきから2週間も過ぎている。
芽は出ないんだ…
あきらめて、忘れかけていた頃に、3粒だけ発芽した。
 
畑に植え替えて10センチくらいになった頃、
成長が止まったかのように見えた。
まったく大きくならない。
 
畑では、野菜も一緒に植えている。
草も生えている。
肥料を使っていないから、栄養が足りていないのかもしれない。
 
そんな心配をしていると、
夏になると急に背丈が大きくなった。
それからは、次々に蕾がついて開花が始まった。

綿の花


 
開花後に実ができた。
先の尖った楕円形の実が綿の形と結びつかなくて、こんな固そうな実の中に綿ができるのだろうかと疑った。
どうやって、この実の中から綿が出てくるんだろう。

綿の実


 
固そうな実の外皮に少しずつ隙間があく。
白い塊が見えてくる。
でも、全然ふわふわじゃない。
本当に綿になるのかなあ。
 
だんだん隙間が広がって、綿の実がはじけてくる。
開花後、40~60日で綿花ができた。
じっくり、一ヶ月以上の時間をかけて、綿になる。

綿花


 
なんでも、そんなにすぐにはできない。
じっくりゆっくり変化していることに気づけないものだ。
 
綿毛はとてもやわらかくて、手で摘み取ろうとすると地面に落ちてしまいそう。
そっと手のひらにのせる。
 
3本の綿の木から両手いっぱい分くらいの綿を収穫。
両手の中にちょこんとおさまっている。
ふわふわで、なんてかわいいのだろう。
 
自然のままに育ってくれた綿は、ちょっと小さめ。
1つの綿花に房が3~4つ。
1房、3センチくらい。

綿の房


 
綿の房をほぐしてみると、
綿の繊維をまとった種がころんと出てくる。
 
房の中に種が入っている!
1粒じゃない…
7粒!こんな小さな房の中に!?

綿の種


 
初めて綿を育てたときは種を譲っていただいたので、
綿と種は別々にできるものだと思っていた。
綿の中に何か固い物があって、
取り出してみたら「種だ!」ったのだ。
 
綿毛で種がよく見えない。
手で取ってみる。
びっしりと綿毛がくっついている。
指先に力をいれないと取れない。
頑丈に種を守っているみたいだ。
 
でもなんだろう…
指先に伝わってくる繊細な優しさ。
 
 
並べてみよう。
7粒の種と綿。
種の形もいろいろ個性があって、おもしろい。

綿の種と綿毛


 
すでに、来年はどの種を蒔こうかと考えていた。
ガリガリ、ひょろり、けなげでかわいい。
ふくよか、ぽっちゃりは元気よく芽が出そう。
 
この瞬間から、綿栽培が楽しくて今でも続けている。