耕作放棄地を手作業で開墾する


 
  手作業で草木を刈る
 
祖父母は農業を営んでいた。
でもそれは、20年以上も前のこと。
 
今は草木に覆われて、畑の痕跡はない。
ここで畑をやろうと決めたものの、まずは草を刈り取らないことには土さえ見えない。
電気は通っていないし、機械も持っていない。
すべて手作業だ。

開墾前の畑


ススキ、ササなど背丈の高い草が密集している。
大きなクモの巣がいくつもあって、侵入者を捕らえる。
足を踏み入れる場所さえない有様を前にして、
何からしていいのか、わからない。
 
はじめて使うノコギリ鎌。
最初のひと刈り。
恐かった。
不安だった。
草を刈る手つきはぎこちない。
その感覚は今でも忘れない。忘れずにいる。
 
 
自分の手で刈ったから、わかること。
 
指先から伝わってくる刺激の強弱は、茎の太さや細さに比例しているわけでもない。
 
刈った瞬間の草木が放つ香りは、
眉間にシワがよって鼻がおかしくなりそうな匂いもあれば、
ふんわりとハーブのようなリラックスする香りがするときもある。
 
同じ畑なのに地形によって湿っぽいところもあれば、
乾燥して土がカチコチになっているところもある。
 
土の色もまったく違う。
 
知識もないまま刈り進めているうちに、いつのまにか畑の形になっていく。
ああしよう、こうしようと始めに決めるのではなく、
どうしようか、どうしたらいいんだろうかと思いながら、
一歩一歩その足を前へ、その手を前へ。
 
恐いのは、自分でやったことがないから。
不安なのは、こんなことをして、これからどうなるんだろうって考えるから。
時間と労力のムダじゃないかって思うから。
 
そんなふうで、たいして気合いも勢いもなく開墾を始めたが、
振りかえると後ろには畑の輪郭が現れていた。
 
ここは畑だったんだ。
 
  開墾に使う道具
 
石や切り株につまずきながら、ノコギリ鎌だけで刈り進んでいく。
持ち手が滑りにくい凸凹形状になっていて、握力の弱い方でも握りやすく負担が少ない。
以前は棒状のものを使っていたが、手から抜け落ちてしまうことがあった。

ノコギリ鎌

 
笹は地下茎で畑全体に広がっている。
地上部を刈り取っても、地下茎が残っていると、また勢いよく生えてくる。
だから、今でも笹は生えてくるたびに刈っている。
📋 種を蒔く前に畑の準備 笹を刈る
 
根っこが張っているススキや小さめの切り株などを掘り起こすときには鍬が必要になった。
ススキの株は直径50センチ以上にもなっていて、
地上部を刈り取るだけでは何も植えられない。
体格が小柄な私は、柄が短めの重くて刃が厚い唐鍬が使いやすかった。
鍬の重さを利用して振り下ろし、粘土質の固い土を砕いて根っこを掘り起こす。


 
根っこを掘り起こした後は、大きな穴が空いている。
土を移動させるときには大きめのスコップを使った。
地面に立てて、両足を乗せられるものがいい。
ギザ刃がついているスコップは根切りもできる。
 
あとは、木を切るためのノコギリ。
 
どれも、ホームセンターで購入できるもので十分だ。
 
  開墾中に出てくるもの
 
直径15~20センチぐらいの石がゴロゴロ出てくる。

畑に石がゴロゴロ


幼い頃、祖父母の手伝いをしたときに聞いたことを覚えている。
粘土質の固い土なので、水や空気の通り道ができるように、小石はわざと残している。
大きな石は見つけるたびに取り除いておいた。
 
鍬が木の根っこに引っかかることもよくある。
細いものもあるが、直径3センチくらいの太さのものが多い。

木の長い根っこ


切り株を掘り起こすと、こんなに固い土の断面からミミズが出てくる。
固い土の隙間にミミズがいる


風の向きや太陽の動きを考えたり、土の状態や地形から水の流れを予測して溝を作ったり、
形があるようなないような場所から自然のままに畑をつくる。
 
意外とできる。
気がつけば、20アールくらい開墾していた。
のんびり手作業でも、このくらいはひとりで開墾できるわけだ。
 
  虫さされ対策は必須!
 
開墾中は、とにかく虫に刺される。
帽子をかぶり、長袖・長ズボンの服を着て、首元にはタオルを巻き、虫よけスプレーを振りまき、これでどうだと挑むのですが、毎度敗北…
 
何カ所も刺されて、腫れてしまうことも。

頬が真っ赤に腫れる


周りをブンブン飛んでくるなら、気づくことができるのだが、服の中に潜り込んで知らない間に刺されている。
時間がたった頃に痛かったり痒かったり。

膝には虫に噛まれた痕跡


今のところ、ハブに噛まれる、蜂に刺されるなどの大きなケガはしていない。
作業は安全を確認し慎重に行っている。
しかし、油断できない。
山にはいろんな生き物がいる。
周りを注意深く観察して気をつけないといけない。